新しく選ばれた者たち

6/8
前へ
/36ページ
次へ
直後に感じた、胸の内側からジワリと熱くなる感覚。 流れに逆らわず後ろに倒れた少女は、ゆっくりと自分の胸のあたりを見た。 「あ……」 それが、彼女の見た最後の光景になった。 自分の胸に刺さった一振りの刀と吹き出る血、その刀越しに、手を前に突き出した藤堂の姿が、見えた。 藤堂は、絶命した少女を見てポツリを呟いた。 「女子供も関係ないんだよ。みんな、生かしちゃおけない敵だからさ」 その脅威はやがて、彼の大切なものの命を脅かすから……。 「平助」 こちらへ歩いてくる気配と声がした。 藤堂はそちらを振り返る。 やがて現れた沖田は、藤堂を見つけるとにっこり笑った。 「あ、ここに居ましたか、平助」 「総司」 「終ったみたいですね」 「うん。みんな殺し……あ」 何かに気づいたように、藤堂の言葉が止まった。 沖田が不思議そうに顔を覗き込む。 「平助、どうしたん」 「みんな、殺(ヤ)っちゃったよ」 「はい?」 「どうしよう、誰か一人だけでも必ず連れて来いって土方さんが!」 「あ」 そこで、沖田も藤堂が青くなっている原因に気が付いた。 全滅させてしまったら、仲間の居場所を吐かせられないではないか。 所詮ここは雑魚の根城なのだ。 こいつらを使って、大物を釣り上げようとしていたのに。 「どうしよう、どうしよう」 「落ち着いてください平助。まあ、大丈夫ですって」 「もう!総司は落ち着きすぎ!土方さんに怒られちゃうじゃん!」 死体の中で狼狽える藤堂とそれを諌める沖田。 それは、異様な光景だった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

599人が本棚に入れています
本棚に追加