新しく選ばれた者たち

7/8
前へ
/36ページ
次へ
その時だった。 「あ゛あ゛ぁぁぁぁああああああああ!!」 突然躍り出る影。 藤堂の背後に出たそれは、頭上に掲げた刀をそのまま藤堂目掛けて振り下ろした。 最後の悪足掻きだった。 肩を切られつつも、息の根は止まっていなかった。 激しい痛みの中身体を起こすと、何やら狼狽えている仇目掛けて渾身の一撃を振り下ろした。 相手は振り向かない。 殺った。一矢を報いた。仲間の敵を討った。 これで死ねる。 そう、思った。 ーーが。 ぴたり。 「……え?」 何が起きたのか、わからなかった。 ……か、体……が……。 動かなかった。 己の体が、何かに固定されているようにびくともしない。 自分の意思通りにならない。 浪士は、刀を振り下した状態のまま固まっていた。 あと一歩で斬れるという擦れ擦れで動きが止まっている。 な、なぜ? 意味が分からないが、これではどうしようもない。 振り下ろそうとも、ピクリともしなかった。 「……さすが、“念力”ですね」 にこにこ笑っている長髪が口を開いた。 「ただ止めただけ」 後ろを向いていた短髪が応える。 「それでもすごいですよ、平助」 長髪の方が、スタスタと浪士のもとへやってきた。 その目が、固まったままの浪士に向く。 そして、彼は、より一層ニタァと笑った。 それは子供が欲しい玩具を手に入れた時のように。 本当に嬉しそうに。 しかし、その笑顔は邪気に満ち溢れていて。 「あはっ。生きてるひと、みーつけたっ」 浪士の顔が、血を抜いたように真っ青になった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

599人が本棚に入れています
本棚に追加