屯所

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そう青年に言う男はさっきまでの鬼の姿とうってかわって一瞬優しい顔をした 鬼になったり、優しい顔をしたと思ったら直ぐに表情を戻したり、雪にとっては到底分かりそうにもない事が目の前で起こっている 自分はこんな表情はできない たとえ、…演技だとしても 雪が二人の男を見ていると青年が雪に目を向ける そしてもう一度土方に目をやると、言葉なしでも青年の意図が分かったのか、かるく頷くと部屋を出ていった 『いくよ。』 青年は雪に片手を伸ばしニコッと笑顔を雪に向ける しかし雪は差し出される青年の手を取ろうとしない 青年は待っているのかそのままだ 雪は青年をキッとにらむ 最後まで抗いたいのだ 例え無理でも 大人しく捕まるのは嫌だ 初めて自分で決めた抗う道を投げ出したくない しかし雪はこのまま抗っても奴隷の道は変わらないだろうと確信をもっていた この手を取れば奴隷にされる為に連れていかれる 聞いた話では途中から奴隷にされる人は床に押し付けられて背中に無理矢理焼き印をおされ、着ていた服は剥がさるのが始まりだという 奴隷になれば最後。 始まりから始まって終わりまで苦しみしかまっていない
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