壱 プロローグ

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2xxx年 科学技術の発展を とげたある国では、 奴隷化が進んでいた 奴隷は主に 貴族に目をつけられた 一般人や 生まれながらにして、 親が奴隷、 もしくは既に死んで いない子などが対象 であった 何百年まで自由・平等をかかげていた国も今では見る影もない そんな中、視的に穏やかに暮らしている一般人、『雪(ゆき)』は母と一緒に買い物に出掛けていた 計算しつくされた建物、動くゴミ拾い機、それによって綺麗にされた床、ボタン一つで終わる買い物、空中を飛び交う自動車。 今では考えられない風景に目を止める者などいない 買い物を一分程で終え、帰りは自動式のフローリングにのる 流れに身を任せ、雪はガラスの向こう側を見つめていた 雪の視線の先には、手と足に鉄格子をはめ、一列に並んでいる者達が まるでゾンビのように歩いていた 雪は気になった きかずには居られなかった 『ねぇね、お母さん。なんであの人達はあんな格好をしているの?』 母は一瞬目を瞬いたがすぐに平然を装う 『……あら珍しいわね。奴隷が服を着させてもらっているなんて。』 そうではなかった 雪が聞いているのはそんな事ではない なんであの仕打ちがされているのか聞いていた 胸がしめつけられるように思った 『同じ人間なのに……。』 ボソッと誰に言うわけでもなく呟いた 自分の口からなぜこんな言葉がでるのか、この感情はなんなのか 今の雪には分からなかった そんな言葉が聞こえなかったのか、あるいは聞こうとしなかったのか、母は別の話題を持ちかけてきた いつも真っ直ぐ雪の目をみて話してくれる母が、 目を反らしながら。
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