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佐兵衛が野良仕事を終えると、あたりはすっかり暗くなっていた。
慌て提灯に火をともす。
佐兵衛は日の暮れる早さに驚いた。
つい数日前までは、この時間でもまだ十分明るかったのだ。
秋の日暮れは釣瓶落としというが、本当に驚くもんだな、などと佐兵衛は思う。
何やら空気が冷えてきたので、佐兵衛は家路を急いだ。
ふと道の脇に目をやると、うっすら人影が見えた。
こんな時間に提灯も持たずになんだろう、と不思議がって佐兵衛は近づいた。
木にもたれるように座っている。
服装からして、例の東京から来た連中の一人らしい。
何をしているのか見ようと、佐兵衛は提灯を近付けた。
照らされたものを見て、佐兵衛は思わず尻もちをついた。
提灯の灯りに浮かび上がった人物は首から上がなかったのだ。
その断面からは、血が流れだし、白い開襟シャツを真赤に染めていた。
叫び声を上げ、佐兵衛は慌ててその場から逃げようとした。
しかし、すぐに足元にあったものにつまずいて転んでしまった。
起き上がって、足元を見る。
それは、血に塗れた頭のない仏像だった。
「たっ、祟りだぁ、首刈り観音さまの祟りだぁ。」
佐兵衛は叫びながら、一目散に家まで逃げ帰った。
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