901人が本棚に入れています
本棚に追加
朔耶がそう口にするともともと静まり返っていた部屋が、緊張した空気で包まれた。
張り詰めた空気は普段の定期集会のときとも違い、否応なく今回の事件の重大さを感じることができた。
私がその危機感から外れていただけでどうしようもなく場違いな雰囲気に気後れした。
「とりあえず、目の前の資料に目を通してください。今回の事件の詳細が書いてあります」
私は遅れて入ってきたため、その資料には目を通していなかった。
それを手に取り、一通り目を通したがどれも私の証言で作られたものなので読んでもほとんど無意味だった。
「今回の事件で白銀が狙われているのは皆さんわかっていると思います」
朔耶はきっと私たちと同じ資料を数枚めくるとそういった。
「第一発見者はみんな諒ですね。何か付け足すことはありますか」
珍しく意見を求めてくる朔耶に私は眉間にしわを寄せた。
こいつの頼まれ事はろくなことがない。
「犯人の特定とはいかないまでも、それなりに考えるところはあるでしょう? 諒」
「……ああ」
私は渋々席を立った。資料はほとんど意味がないのでファイルに戻す。
「三件目の卜部殺害に関して私は犯人が違うと思う」
私の言葉に、ふっと滑らせた視線の先にいた朔耶の笑みが一瞬深くなった。
「《運命人》が殺されていない点、あと得物が違う」
私が言葉を続けると、彼の笑顔は元に戻っていた。
笑顔が張り付いた仮面の下の本心が全く読めない。
「一件目二件目の鵜野原組、榊組の死体の切り刻まれ方は細い獲物だな。たぶん日本刀。
鎌居達に切り刻まれたようだった上に、胸に杭を打たれて首が切られている。けど卜部の死体は細い、刀じゃない何らかの得物で、切り刻まれた上に、胸を杭で打たれていた。
あれは絶対に刀傷じゃない」
「確信は?」
朔耶が問うた。
「――古我桂」
最初のコメントを投稿しよう!