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脈絡のない私の言葉に場が凍りつく。
それ以外の言葉が思いつかないほど誰もが思考を制止させる。
「あの傷は古我桂の『大文字』ににている。
いやあれは『大文字』を習得したとしか、オレには思えない」
私は一息に言い切った。
途中で切ってしまったらありえないと否定する自分が首を上げる。
そうだ。
あの技は荒業もいいところ。
そもそも、三刀流自体がかつて彼以外に存在しない。
一本の長刀に、二本の小太刀。
二本の小太刀は鎖でつながれ、柄頭をつなげる。
場合によっては、鎖を伸ばし、小太刀を投擲の目的にも使えるという代物だ。
《大文字》は二刀流では絶対にできない技だ。
剣圧による風圧で遠距離の攻撃をするもので、太刀による長さのある圧と小太刀による正の構えからの圧、そして逆手側にあるもう一方の小太刀が傷に更なる傷を刹那の間に順繰りに与える。
基本的に一方向、つまり縦なら縦、横なら横の傷のみが走る。
それが、卜部にはなかったのである。ただ、切り刻むだけではだめなのである。
「アナタが言うのはつまり、古我 桂の技を真似て今回の殺しを行った、ということですよね」
「ああ。けど、ひとつ私には疑問がある。
鵜野原の死体だ。死体から眼球を取るなんてことすると思うか?
ある処理をしなければ、眼球だってすぐに消えちまう」
「それは、どういう意味ですか? まさか、材料にでも使ったとでも言いたいんですかね?」
黒縁の眼鏡をそっと小指で上げた晦里がいまだ訛りの残る言葉で尋ねた。
「わからない。けれど、殺すだけが目的なら、殺しだけで消えるだろう。
どうせ、ほっときゃ消えるんだ、オレ達は。
眼球を取ったということには何らかの意味がある」
思い当たる節はあるか? と私は全体にたずねた。
円卓を囲む全員に視線を走らせた。
「ひとつ。悪魔の召還とか?」
朔耶がくつくつと笑いながらそういった。
冗談なのは丸分かりで私はそれを黙殺する。さすがに軽口をたたける奴は折らず、部屋全体が静まり返る。
そこに、長いため息が漏れた。
「人形師」
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