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「逆に言えば、お前ならできるということだな」
「綾切」
隣に座る綾切を、私はたしなめるようにいった。
無表情のまま彼は私を一瞥して、前に向き直った。
「……ならば、人形師を炙り出すか。数はどれくらいいるかわかるか?」
「まあかじっているのを含めれば百は下らないでしょうね」
肩をすくめておどけた晦里の言葉にげんなりとした雰囲気漂う。
すかさず、口を開いたのは朔耶だった。
「じゃあ、それは私のほうで調べましょう」
この決断力というか、行動力の速さは朔耶の特技ともいえると私はつくづく思う。
まあ、彼の情報網を持ってすれば、早々に割り出す事は可能だと思うが。
「どちらにせよ、現段階で全く手立て無しです。情報が集まるのを待ちましょ。
各人、しばらく一ヵ月後の学園祭の準備に明け暮れましょう」
全体を見渡した朔耶を私はうんざりしたような目で見て海月のほうに視線をやる。
「え……」
無意識のうちに私は声を出していた。
綾切が横目で私を睨んだ。私は慌てて、視線を朔耶に戻す。
――あいつがあんな顔するなんて。
なんともいえない複雑な表情が彼の顔の上で渦巻いていた。
戸惑いとも、恨みともつかない。その要素はあるのだろうが、どれか一つが表増に出ている雰囲気ではない。
全てが地面から手を伸ばすかのように蠢いていた。
どれが一番声を上げているかはわからない。
私は唇をかんだ。そう思ったのは私の錯覚だろうか?
いや、なんともいえないけれど、でも少なからず負の感情を朔耶にぶつけているのは確かだった。
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