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愛想ってものをちょっとはみせたらどうなんですか、と朔耶が苦笑していたが、綾切たちに無理な話だろう。
「次は私ですかね」
そんな事はお構いなしに腰を上げた晦里が再び白衣に引っ掛けた眼鏡をかけた。
「黒竜の若松晦里。ちなみに中等部、高等部の総合保険センターの保険医です。よろしく。
運命人の結城響子は欠席なので後日また」
席に座ったまま足を組みなおした晦里は白衣以外の髪、瞳、服などの全てが黒で統一された奴で、見た目からも胡散臭さが漂いまくっている。
彼は朔耶と同レベルでつかみどころがない。
「次は――真路、君だ」
晦里の言葉に真路が席を立つ。
「地竜・那古真路。大学部美術科4年」
斜めに切った茶の髪の下で茶の瞳が光る。
絵の具で汚れ切ったシャツは白なのか、何色なのかもはや分からない。いすに座ったまま腕を組んだ春舞を見る。
「真路の《運命人》、一ノ瀬春舞。医学部医学科3年」
真っ赤の髪をしたストレートの髪が背中に張り付くように艶やかに流されている。
「ちなみに、真路と諒は兄弟」
「晦里」
不意打ちの晦里の言葉に私は容赦なく晦里を睨んだ。
「いいでしょー事実だから」飄々とした彼の態度にいらっとしたが、私は舌打で流した。
真路は、全く気にした風もないのが叉むかつくが、春舞に噛み付くように睨まれた。
人の神経を逆なでするようなことが趣味の晦里だ。
もう、あえて突っ込む気も失せた。というか、したら春舞に本当に噛みつかれそうだ。
私が長くため息を漏らして、椅子に深くへたり込んだ。視線を上げると、なぜか心と視線が合った。
「諒、一応アナタも言っておきましょうか。心さんも」
朔耶がそういうと、心は無表情のまま席を立った。
「真宮心。《夢宿りの樹》を守護する巫女。貴方と同じ高一」
心はそれだけ言い捨てると席に付いた。
「天竜、古雅諒。高等部学生会副会長。《運命人》はいない。以上」
つれないなぁと朔耶が独りごちたが無視して私は席に座る。
「さ、じゃあ、今日はお開きで。後日長からの命令が下ったらそれにしたがって行動してください」
解散、と手をたたいた朔耶はさっさと部屋を出た。
綾切たちも真路たちもさっさと部屋を出た。私も腰を上げる。
なんとなく、なんとなくだけれど。
私は何かを変えなければいけないのかもしれない。
真実をつかむためには……
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