1.5)4月24日 心が揺さぶられて仕方がないんだ

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 学園祭を間近に控えると学生が全体的に浮き足立つ。  私は彼らの逆で、日に日に憂鬱になっていくのだけれど…… 「はぁっ!!??2Bの机貸し出し書類なんてないぞ!!   そもそも、締め切り一週間前だし! 自分のところもう一回探してからかけなおして来い!」  私は怒りをぶちまけるように携帯を勢いよく閉じた。 「頭痛がする」  執務室の机にうなだれて嘆くと、苦笑した海月がタンブラーにコーヒーを入れて持ってきてくれた。 「おつかれ」  タンブラーと一緒に目の前にちらつかせられた赤い袋のビスケット。私が小さいころから好きなメーカーだ。 「ありがと」  素直にそれも受け取ると風を破いて一枚を口にくわえた。  自分から進んで買う事は今までなかったからおそらく、里にいたときぶりに食べた。  懐かしい味に気持ちが和んだ。 「お前少しは休憩取れよ。二時間はずっとPCに向かったままだろ?」  私の頭にのしかかってくる彼は画面を覗き込みながら 「こまけぇー」  と一言漏らした。 「おまえっ……!」  私は思わず机にこぶしをたたきつけた。  その音に海月はびくりとあとじさる。 「お前は去年の能無し生徒会長のことを知らないからそんなことがいえるんだ……!!  去年の悲劇は味わいたくない」  さあっと、自分の顔が青ざめる感覚を覚える。  思い出したくないけれど、去年の騒動を思い返す。  去年までは中等部にいて、私は中等部学生会長だった。  最高責任者は高等部の人間だが、まあそれはそれは使えない……  禍に対する警備に穴が多すぎるわで、文化祭数日前までそのことが発覚しなかった。  それを知った、綾切と私が青ざめ、すべて作り直したのだ。  被害こそ無かったからよかったものの綿密にする必要性がある。  やたら神経質になっているのはその所為だ。 「ああ、でもさすがにそろそろ眼が限界かも……ちょっと出てくるわ」  私は海月を頭から振り落として、執務室を出た。  外は夕暮れ時で板張りの床が赤く沈んでいた。
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