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学生会館からでると、しげった青葉が風になびくさわやかな音が聞こえた。
壁に立てかけてあった自転車にまたがると私は高校の校舎に向かった。
文化祭前ということもあって、途中で看板などに色をつけている生徒の姿が多かった。
部活動の生徒も多く見受けられたが、部活に所属していない生徒でもほとんど校舎に残っているだろう帰寮時間さえ守れば特に校舎に何時まで残ってはいけないとかそういった規則はない。
「古雅先輩!」
自転車を走らせていたら突然前から大きく手を振る生徒を見かけた。
「ああ、藤弥」
私はMBから降りると藤弥はそのままのテンションで駆け寄ってきた。
薄い茶の髪に深緑の瞳――華奢な体は同世代のものから見ても明らかに小柄で少年の域を脱せていない。
私のひとつしたとは思えない体格だ。特にいつもやたら長身で体躯のしっかりとしたやつらばかり見ているとなおさらだ。
「お久しぶりです」
「久しぶりだな。お前が今年は中学の学生会長になったんだよな?頼むぞ」
満面の笑みの藤弥の頭を私はくしゃっとなでた。
彼は藍葉藤弥。
白い制服を着ていることから学生会のメンバーであることは明らかである。
「泉は今日は居ないのか」
「ええ、泉は別件で職員室のほうへ」
藤弥の運命人の播谷泉はこのおとなしそうな藤弥とは正反対ではつらつとした子だ。
「中等部のほうはどうだ?順調か?」
「ええ、もちろんです。去年古雅先輩がマニュアルを残してくださったので、非常に助かっていますよ」
柔らかな笑みで彼は微笑むと遠くで藤弥を呼ぶ声が聞こえた。
「すみません、よばれちゃったみたいなので、これで失礼しますね。今度又稽古をつけてください」
「ああ、もちろんだ」
彼はバインダーを胸に抱えて一度頭を下げるとぱたぱたと去っていった。
里からこちらに来た時期が近かったせいか藤弥とは仲良くやっている。
いかんせん、性格が優しいせいか、あまり目立っては居ないが功績は同年代の中では白銀に迫るものがある。
まだ位としては銀だが鵜野原の後任としてもなまえはあがっているだろう。
年齢的にも選ばれておかしくない年齢だ。
私はそんな彼の背中を視線でおい、また自転車を漕ぎ出した。
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