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「馬鹿っ!!」
その声と同時だった。
彼女は窓の桟をけって窓から飛び降りる。
私は目一杯手を伸ばして――彼女を抱きとめた。
衝撃で後に倒れてしたたかレンガの地面に頭を打て顔をしかめた。
「お前……その無鉄砲なところ直さねぇと死ぬぞ……」
「アナタが話を聞いてくれたら私だって飛び降りたりしなかったわ!」
「しるかっ!」
私はそっと彼女を自分の上から下ろして、立ち上がった。
彼女が軽かったおかげでとりあえず腰と頭は痛むが無事だ。
「お願い、諒。話を聞いて」
「いやだ。オレは忙しい」
「どうして私を避けるの!?」
「お前こそ、なぜオレを気にかける」
「それは……」
逡巡した心を私はにらみすえた。
「オレはお前のお守りをするためにここにいるんじゃない。秩序を守るために居るんだ」
踵を返してさっさと歩き始める私に心は何も言えない様子で――
――振り返る間際に見た泣き出しそうな顔が眼に焼きついた。
必死で走って、彼女から見えなくなるくらいまで走って、私は人のいない建物と建物の間に体を滑り込ませた。
上がった息を整えるように何度か呼吸して――その場にしゃがみこんだ。自分の肩を抱いて、小さくなっていた。
私達は一緒に居るべきではない。
わかっている。
十分すぎるくらいわかってる。
長の命令でお前を守らなければいけない。
でも――でも、やはり、私と心は一緒に居るべきではない。
心が揺さぶられて仕方がないんだ――……。
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