1.5)4月24日 心が揺さぶられて仕方がないんだ

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「ああ、真那」 「どうしたの学生会いったんじゃなかったの?」  真那は紅いジャージをきて、いたるところにダンボールの切りくずをつけていた。  おそらく何か資材を取りにきたのだろう。 「財布忘れてな」  尻ポケットを軽く叩きながら、肩を竦めると、真那はくすりと苦笑した。 「あ、海月、実力テストすごかったわね」  あれだけ受けるのごねたのにね、と、真那はころころと涼やかに笑った。 「うっせ」  少しだけすねたそぶりを見せて口を尖らせる。  すると、真那はそっと俺の胴に細い腕を絡めた。  そんなに力の無い彼女の腕で抱きしめられていると、俺はそっと彼女の髪を梳いた。 「どうした?」 「ん。なんでもないよ」  何か不安にさせるようなことをしただろうか。俺は自分の行動をさかのぼってみる。  とんと見当もつかない。 「海月」 「なに?」  頬を寄せてくる真那を軽く抱きしめて俺は問うと、真那はなお顔をうずめてくる。  そして、丸い眼で見上げてきた。 「ちょっと甘えたかっただけ」 「そう?」  腑に落ちなかったけどそういうならそうなのかも。 「好きよ……海月」  真那はそっと腕を解いて、背伸びして唇を触れさせてきた。 「ちょ……学校」  俺は真那を引き剥がして、慌てて遠ざける。  真那はすねたようにうつむいて、それから口を開こうとはしなかった。 「真那? なんか俺した?」  頸を横に振る。 「じゃあ、なんかされた?」  また頸を横に振る。 「じゃあなに?」 「なんでもないの。ただ、最近海月と二人で話すこと少ないんだもの。いつも諒がいるし」  ああ、それか。  ため息をつきたくなったのをこらえて、腰をかがめ、彼女と視線を合わせた。 「こっちにきたら、危ない事がたくさんある。  お前もそれくらい分かるだろう?  いま諒と組んでいるんだ。しかたないだろう?」  一度頷く真那の頭を撫でてやると少しだけ機嫌を直したようだが、それでもまだ納得したようではない。  けれど、これは割り切ってもらわないと運命人とはいえ傍に置けなくなる。  傍に置かなくても力が使えるならなおさら。  上がきるといったら切られる。それが分からないほど、彼女も子供じゃないだろう。
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