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「真那、はやくもどんねぇと、みんな心配すんじゃねぇか? 俺ももうもどらねぇと」
真那は一度頷くと「また明日」と言い残して、去っていった。
俺は黒板に寄り掛かりながら溜息を漏らした。
ぐったりと疲労感がのしかかってくる。
けれど俺もそんな落ち込んでいる時間は無い。
真那の後を追うように教室から出た。
廊下に伸びる長い影を重石のように引き摺っているような気分だった。
不安にさせているとは思わなかった。
諒だから大丈夫という安心感があったことは否めない。
幼馴染で同門だ。《運命人》以上に特別な存在なんていない。
それは彼女も十分に分かっていたはずだ。
でも、不安になったということは俺の行動に何か問題があったのだろう。
気乗りがしないが、自身の行動を改める必要が多少なりともあるのだろう。
いや、それ以上に……俺はいつから真那がこういう、《運命人》とするような――恋人のような行為を躊躇うようになった?
真那の緊張感の無さが俺自身も無意識のうちに気に触っていたんじゃないだろうか?
でもそれはフォローできなかった俺にも責任はある。
「たく……何してんだろ、俺」
自転車をひったくるようにてにすると、そのまま飛び乗る。
少しこぐと、スピードにすぐに乗り、涼しい風が頬を撫でた。
自転車の上で深呼吸すると頭の中に酸素がいきわたるのが分かる。
余計な思考をそのまま引き摺って外に出してくれればいいのに。
そんな馬鹿みたいなことを考えながら、もう学生会に戻るのはやめようと思った。
おそらくこんな調子でやってミスしたほうが後でなに言われるかわからない。
学生会室に戻ろうとしていた自転車の行き先を俺は変えてスーパーに向かった。
何か美味い飯食って、考えまとめよう。
そうだ。それに限る。
確かアサリが特売だ。
それにしよう。
考えをいったん今日のおかずにスライドして、追い払う。
スーパーに着くまでに大体のメニューは決まり、買出しもそんなに時間はかからなかった。
ついでに三日分くらいの食料を買いこむとなかなかな量になり、ロードバイク型の自転車に無理やりつけた荷台にそれらをくくりつけた。
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