0)20x6.5.30 世界は結局人の周りにしか存在し得ないんだ

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「九時五八分任務終了と」  かちんと、小気味のよい音が耳に届く。懐中時計を閉じた音だったのか。新調したてのようなびしっとしたスーツに懐中時計をしまった彼――弓槻 朔耶が落ち着いた足取りでこちらに向かってくる。 「お疲れ様です。報告は私がしておきましょう」 「ありがと」  俺は、地面に落ちている自分の上着を拾い上げる。 「帰寮時間は守ってくださいね、海月。私が春姫に怒られてしまう」 「わかってる」  俺は、上着に袖を通すと自分の胸をつかんだ。  そこにあるのは鎖に通された乳白色の光を持った月のピアス。俺がするには少しばかりかわいらしすぎる。  鼓動のような力を感じるのは俺の気のせいだろうか。
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