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俺はガキだったけどあの時、諒を追っかけてそばにいてやるべきだったのかもしれない。
いや、違う。それは、甘やかしにしか過ぎないのかもしれない。
わからない。
でも、俺がやらなければいけないことを確認することはできた。
俺は諒の部屋を出て、自室に戻ると先ほどの気持ちを振り払うかのように真新しい制服に袖を通す。
のりが利いていて着難かった。
着終わると、自室をでてすぐキッチンに入る。
昨日確認しただけでも食べ物らしい食べ物は入っていなかった。
入っているのはミネラルウォーターのボトルが雑然と四本入っているだけでよくこれで生活していたものだと飽きれを通り越して感動さえする。
嘆息しつつ俺は冷蔵庫の水だけ出してグラスに注ぐと一気にあおった。
仕方がないが今日のところは食堂で何とかしてもらうほかない。
いや、多分いつもはそうしているのだろうがこの冷蔵庫の破綻振りは食堂にいくでもしないと生活自体が成り立たない。
うん、断言できる。
これは完全なる環境因子とか言いようがないと思う。
師匠も師匠で衣食住に何故か無頓着で、食事は作れないし、胃になにか入ればいいという破綻振り。
服だって、同じ白い着物しかもっていなかった。
住の点でもすめれば良いという始末、泉から大幅に離れた離れにすんでいた(さらに、人が住めたような場所ではないぼろ屋だったのを俺と諒が彼の下に付くと聞いて、誰かが説得して直させたらしい)。
どちらにせよ、俺の帰ってきたからの一番の仕事はこの家の冷蔵庫を人並みくらいには満たすことかもしれない。
本当にどうやって生活しているのか、疑問で仕方がない。
部屋がカオスになっていないのは物理的に生活に必要な物が欠如しているからなのかもしれない。
多分、がらんとしているのだろう。
「まあ、ある意味生活破綻者は俺もか」
俺は独りごちて苦笑すると、冷蔵庫の扉を閉めてペットボトルをしまいこんだ。
俺は再び部屋に戻るとかばんの中からこの学校のパンフレットを取り出し、表紙を捲った。
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