1)20xx5年4月5日どちらかが変わったなら、どっちも変わった

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 俺と同じデザインの白の学ランに似た制服だが、諒の制服は襟や裾の縁取りが金色である。 「お前、少しは生活修正をするべきだともうぞ」  俺は冷蔵庫に視線をやりながら、あきれた声でそういった。 「朝、顔をあわせて第一声がそれか」  うんざりしたような表情で諒がいいかえす。 「まあ、いい。おはよう」 「おはよう」 「で、今まで何してた?」  半分脱力して肩を落としつつ、もう怒る気力もない俺はドアに片手を付きつつ、真正面に立つ諒を見下ろした。  視線がずいぶんとしたに感じられた――頭ひとつ分と少し小さいくらいだろうか。 「どうでもいいだろ。オレがいく場所なんてお前に関係ない」  投げやりな諒の言葉に流石の俺もこめかみを引くつかせた。  朝起こしにいったら諒の部屋には誰もいなくて、こっちはどれだけ、心配したか。 「ああ! お前わかってんの!?  ただでさえ白銀が狙われてて、手がかりもほとんどないってのに独りで出歩く馬鹿がいるか!  心配したんだぞ!?こっちは!」  俺はまくし立てるように一気に言い捨てる。  だが、何なんだこの顔。俺は思わず怪訝そうに顔を歪めた。  きょとんとしているのだが、俺を見上げる視線がただ鋭い。  段々と、いぶかしげな視線に変わっていく、諒の表情に俺は思わず固まった。 「何で心配するんだ? お前が」 「は?」  俺は素っ頓狂な声を思わず出してしまった。 「心配って……」 「なんでお前が私の心配なんてする。関係ない」 「何言って……」 「もう、オレ達は子供じゃない」  俺の言葉をさえぎってはっきりと言い捨てた諒が、さっと踵を返した。  唖然としてしまって、腕をつかむどころか声も出なかった。  何故。  その言葉だけが浮かんではぶわりと大きくなって俺を揺さぶるだけ揺さぶって、消えていく。  何故?諒はそんなことを言う?  何でもわかるつもりでいたから、いざ、疑問に思ってしまうと動揺が大きいのだろう。 「ばかみてぇ……」  俺は独りごちだ。  結局のところ、何にもわかっていたなかったのだ。俺は。  俺は部屋に一度戻り鞄を手にした。  俺達は変わったから。  でも変わったからこそ、変えられることもある。  だから――――
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