901人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
始業式というのは酷くつまらないものだ。
生徒はほとんどが中等部からの上がりで、銀に上がった奴が数名と海月、真那だけだ。
だから、ほとんど転入生として扱われるせいか改まって入学式のようなことはしないらしい。
中等部と高等部の間にある舞台をかねそろえたホールという場所に集められ、長の毎年ほとんど変わらない退屈な話を聞き、二〇分ほどで、始業式は終わった。
クラスごとにホールから出されても、一学年千人以上の生徒数だ。
ごったがえすのも無理はない。
久我原と古雅で出席番号がたまたま隣になった私達は、ムカデレース並みの速さで進む人ごみの中を同じようにのろのろと進んだ。
すると唐突に、ふっと視界が開けて――その中で栗色の長い髪をした背の低い奴を見つけた。
しかし、私にしてみれば、彼女だと一発でわかるアイデンティティだ。
「真那」
海月より先に私は名前を呼ぶ。
すると、ほとんど反射的に彼女は振り向いて私をすぐに見つけた。
遠くにいたから一発で聞こえるとは思わなかったが、聞こえたならよかった。
足を止めた彼女を避けるようにして他の学生はお喋りをしながら廊下を進んでいく。
迷惑そうににらまれるのもかまわず、人ごみを逆流してくる真那はなかなかたいしたものだ。
「諒!? 諒よね!」
いきなり飛びついてきた彼女はくりっとした青い目で私を確かめるように上からしたまで走らせる。
そんなことされたほうがどぎまぎする。
「久しぶり。真那」
私はわずかに微笑むと真那を自分の体から引き剥がす。
「真那、お前昨日はどこにいたんだよ。学園長のところにいくって言といただろ」
「だって、心がいたんだもの。お正月からあっていなかった双子の妹に会いにいって悪い?」
すましたように真那はそういうとつんとそっぽを向いた。
まるで子猫だ。私はかすかに笑うと、真那も微笑んだ。
相変わらず天真爛漫さに安堵するとともに、バランスの悪い危機感を抱いた。
最初のコメントを投稿しよう!