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「でも、心はいなかったの。どこにいっていたのかしら。結局、昨日はあえなかったわ」
私はおどけるように肩を竦めた。あの銀色の髪の妖精を語る少女を思い出すと苦笑が漏れた。
「真那、そういえば心は? 見かけないけど」
「うーん、さぼりかしら。私も朝少しあっただけなの」
小首をかしげて、唇を尖らせた。
その仕草は十六を迎える彼女には不釣合いなようにも見えたが、童顔な彼女にはやけに似合っていると思った。
「多分、どっかにいるさ」
海月が真那の髪をぐしゃぐしゃにかき回しながらいった。
そのときだった。
私は異様な感覚に顔を上げた。
ああ、きた。
そう思った時には人ごみが壁側によって意図の流れをさかのぼってくる彼女を誰もが目で追った。
「おはよう、真那」
銀色の長い髪と同じ色をした瞳が切れ長の大きな目の中に埋まっている。
私とそんなに身長の変わらない――真宮 心が真那の横に立った。
「あいかわらず、堂々としていらっしゃいますこと」
海月が道化師のようにおどけて肩をすくめた。
きっとした心の目が海月を一瞥したが、ほとんど無視で、すぐに視線は真那のほうに戻った。
「言われたとおりね。三人一緒だわ。
朔耶さんから学生会の時間が早まったわ」
「連絡は?」
私が携帯を取り出しつつ聞く。
「送ったそうだけど、どうせ式中は電源切ってるでしょう?」
と、情報だけを残してそれ以外をそぎ落としたようにいった。
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