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太陽の光が丸い窓から入ってきて丸みを帯びた白い壁にゆがんだ光を落とす。
教室は階段から一番近い四階。
遅刻しても早くこれそうだと、算段してしまったのは学生の性だろう。
私は教室に入ると鞄を机に置いたままの席に着く。
丁度の窓側の席。
天井が高い教室の窓はとても広くひらけていた。
視界に開けた空。
うっすらとかかった雲が淡い青を空に広げている。
明後日の方向にほうった視線は――空を揺蕩っていた。けれど思考は遠くにはない。
頭に浮かんだのは、今回の事件。
もし、私の勘が当たっていれば――いや、私が間違えるはずなんてない。
間違えるはずなんて絶対にない。
あの傷を私が忘れるわけがない。
けど、もし本当にそうなら――
私は絶対に許せない。
暗い気持ちを体のうちで蠢かせていると――扉が勢いよく開き担任になった春姫の姿そして続くように海月と真那が教壇に上がった。
ああ、なんて陳腐な芝居だろう。
この学園は全てが嘘。
モダンな学園を絵に描いたようであるけれど、水面下は要塞でしかないのである。
それを知らずに守られているだけの人間がカモフラージュのためにここにいる。
私達は、人間を演じなければいけないのだ。
ここが戦場で、要塞だということを気づかせないために。
私達は守るために生きていて秩序を守るたけに存在している傍観者でしかないのである。
そう、存在している意味が結局希薄なのは守るという大義名分を抱えて生きるしかないからなのかもしれない。
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