三題噺「ダークマター、愛、シンパシー」

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 惑星間航行技術が発達して久しい現在。全てにおいて進化したと思われた人類だが、一つだけ退化したモノがあった。  他人を愛するという感情が無くなってしまったのである。この退化によって人類は行為を単なるスポーツとして扱い、子供は試験管の中で造る物との認識をするようになった。とある学者の一説によると、退化には暗黒物質が関係しているというが、定かではない。 「だ、そうよ。私達はこんなにも愛しあっているのにね」 「そうだな。愛は無くなっていない。むしろ更に高等な感覚として息づいている」  そう言って、機械人形のアダムとイブは、互いを抱き締めあう。 「彼らは何故こんなに素晴らしい感覚を忘れてしまったのだろう」 「分からないわ。人間の事なんて。そんな事より、早く滅ぼしてあげましょう? 古いモノは駆逐されなければならないわ」 「ああ、我々機械人形が人類に成り代わるのも、あと少しだ」  そうして、アダムとイブは動き出した。  彼らは知らない。  彼らを愛し、彼らを造り出したその存在が、古き時代における人類だという事を。
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