冷たい胸にキス

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「最後の一葉?」 あなたに関して聞いたうわさで、確かめたいことがあるの。 硬い表情でそう彼女に呼びだされたのは、掃除も終わって整然とした放課後の教室。 窓際にもたれる彼女は、ふりむかずにそう言った。 薄茶色の長い髪が、ふわふわと舞っている。 外国の有名な話。 言葉が少なくともなんのことを示しているのか、はっきりしていた。 「さぁ、分からない」 平気な顔をしてもやっぱり寒いのだろう、セーターの袖口からのぞく彼女の細い指先は赤くなっていた。 冷たいだろうに、可哀想。 それでも今近づけば、ぴしゃりとはねのけられるだけだろうから、仕方なく堪える。
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