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「分からないってなに?」
「だって君はわたしに死んでほしいの?」
まだ二回しかキスもしてないのに。
からかう様にそう返したのは、単に普段ひねくれて皮肉ばっかりな、彼女の素直な質問が可愛いかったから。
わたしが肺炎にかかったのは、夏の終わりのまだうっすらと汗ばむ季節。
咳き込んだ胸が痛くて、口もとから手をはなすと、そこにはべったりと赤い血がついていた。
伝えなくちゃいけないと分かってはいたのだが、繊細な彼女がショックを受ける姿を見るのが嫌だった。
でもそうやってぐずぐず真実を引き伸ばして、今彼女は傷ついている。
「馬鹿なこと言わないで」
うつむいていた彼女は初めて顔をあげて、わたしのことを見た。それで気がついた。大きい瞳が濡れている。彼女は泣いていた。
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