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病院の夕飯は早い。
7時にはもう皆くつろぎ始めている。
大して美味しくもないのに、時間まで制限されて、本当にここは息が詰まる。
「ねぇ、看……伊藤さん、か」
「何?可也ちゃん」
薬を持ってきた看護士に声をかける。
思えば、こっちにきてから看護士に自分から話しかけたのは、初めてだった。
自分から声をかけると、愛想が無いと思っていた看護士も、笑顔を返して来た。
「伊藤さんは、尾黒維人って入院患者、知ってる?」
「えっ……?」
看護士の動きが、一度止まった。
頬が引きつり、目は泳いでいる。
「あ……あぁ、維人君。……いるわね、いるわ。……どうしたの、急に?」
「別に。人から聞いたってだけ」
この人は、きっと良い人だ。
嘘がつけない、本物の白衣の天使。
こういう人、いるんだ。
笑いをかみ殺しながら、毛布を首までかぶった。
「教えてくれて、ありがとう」
白衣の天使は、それに似合わぬ渋い顔をして、あたしの笑顔を見ていた。
毛布を頭までかぶって、小さい夜を作った。
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