1.苺ミルク

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病院の夕飯は早い。 7時にはもう皆くつろぎ始めている。 大して美味しくもないのに、時間まで制限されて、本当にここは息が詰まる。 「ねぇ、看……伊藤さん、か」 「何?可也ちゃん」 薬を持ってきた看護士に声をかける。 思えば、こっちにきてから看護士に自分から話しかけたのは、初めてだった。 自分から声をかけると、愛想が無いと思っていた看護士も、笑顔を返して来た。 「伊藤さんは、尾黒維人って入院患者、知ってる?」 「えっ……?」 看護士の動きが、一度止まった。 頬が引きつり、目は泳いでいる。 「あ……あぁ、維人君。……いるわね、いるわ。……どうしたの、急に?」 「別に。人から聞いたってだけ」 この人は、きっと良い人だ。 嘘がつけない、本物の白衣の天使。 こういう人、いるんだ。 笑いをかみ殺しながら、毛布を首までかぶった。 「教えてくれて、ありがとう」 白衣の天使は、それに似合わぬ渋い顔をして、あたしの笑顔を見ていた。 毛布を頭までかぶって、小さい夜を作った。
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