1.苺ミルク

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例え現実がそうでも、自分で自分を模範的ではないとは、普通は言わないだろう。 昨日なら、分からなかった。 タイムラグが見られたのは、維人も悩んではみたということだろうか。 「気が向いたら、言ってみる」 「それがいい」 維人は、自動販売機と逆の壁に背をついた。 「あれ、ちゃんと持ち帰ってよね」 あたしは紙パックを軽くあごで示し、維人を睨んだ。 維人が肩をすくめる。 「俺の言葉、聞いてなかった?」 「適当な看護士さんにでもあげたら?」 相手の反応は、見ないようにした。 予想は何となくできてしまうから、気恥ずかしくて、紙パックを見ていた。 「気が向いたら、な」 笑いを含んだ声が返って来た。 自分の考えが伝わったのだと、もっと維人を見られなくなって、もっとそっぽを向いた。 「それがいい」
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