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「ろく~!!」
塀の上の指定席で待つ私を、毎朝、毎夕、きずな君は呼ぶ。
だけど今日は違った。
「あ……、猫……。」
きずな君の隣には赤いランドセルの小さな女の子がいた。
私は慌てて視線を反らす。
なんなの?誰なの?この女。込み上げる感情を抑えて必死で目を閉じる。
「あいつ《ろく》っていうんだぜ。無愛想でかわいいだろ?」
「え……、なんか変な名前……。」
「だって首輪に《ろく》って書いてあるし。」
「ふぅん。……帰ろ。」
「え、ちょっと待てってー……。」
きずな君はチラチラと私を振り返りながら女の子を追って歩いて行ってしまった。
この日から私の人生はまたちょっと変わっていった。
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