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季節はゆっくり変わって、空気が乾いて鼻が、痛い。
塀の上と同じくらいお気に入りのこたつで今夜もおばあちゃんとテレビにかじりつく。
「ありゃ、お前の首輪、随分とボロになってるねぇ。ちぎれそうだよ。名前もかすれてこれじゃ読めないね。」
私の首筋を撫でるおばあちゃんの手が暖かい。
きっと明日あたりには私の首には《みるく》と書かれた新しい首輪が巻かれるんでしょう。
きずな君が、気づいてくれる日は来るのかしら。
その瞬間を想像して私はきっと明日も塀に登る。
春風が吹く頃にはきずな君も中学生になる。
もうパンはもらえないかも知れないけれど、それでも私はきずな君の足音に耳を澄ませて、ぬくい風に毛並みを撫でられるの。
いつでもここで待ってます。
終わり
(続く)
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