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「あんただけなんだよ。なんやかんや言いながらでも、ずっとわたしのことを気遣ってくれてたのはね」
「看護師って仕事がどんだけキツいかは見てりゃわかる。
なのに、あんたは他の人の何倍も見回りに時間かけてくれてたのさ」
変なとこ見てる婆ちゃんね。でも、案外悪い気はしない。
「だからね、あんたならすぐにいい人がみつかるよ。分かる人には分かるもんさ」
そんな風に言ってくれたのは嬉しい。でも……。
「でも、あたし……、本気で人に接したことないのよ。
心の見えないあたしなんか誰が好きになってくれるのよ……」
そう言ったあたしに、お婆ちゃんはゆっくり首を振ってみせる。
「さっきのあんたは本気だったじゃないかね。
本気で怒ってくれてたじゃろ? しかも他人のために」
「そう……だったかな……?」
「それが本当のあんたじゃとわたしゃ思うよ」
……ちょっとは空気読んでよ、お婆ちゃん。あんまり面と向かって言われると、照れが先にでるんだからね。
「ごめんよ。こないだは心にもないこと言っちまったね」
おまけに先に謝るなんて何よ。
「あたしこそ、ごめんなさい」
「いいって言ったじゃろ。
けどね、向こうの施設に行っても会いに来とくれよ。貸しがひとつあったじゃろ?」
いまだかつて、こんな真剣な目であたしを見てくれた人なんていなかったわね。
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