◆あたしに親友ができた日◆

長篠友美

スーパーの袋がひとつ地面に落ちて、食材が少し散らばった。

「す、すまない。ちょっと急いでて……」

慌てて食材を拾い集める男性。

ちょっと前までのあたしなら、大声で怒鳴ってたかもしれないわね。

でも今は違ってた。

「いいえ。拾ってくれてありがとう。落としたのが、こっちじゃなくて良かったわね」

このあたしが自然と微笑みを浮かべ、卵の入った方の袋を見せてた。

おまけに、忙しいのに時間とらせて悪かったわね、などと思いそうになってる自分に気付いて苦笑する。

ま、今日はお婆ちゃんの新しい門出の前日だから特別なのよ。