長篠友美

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「ねえ……」 同僚の看護師のその口調で、言いたいことが分かってしまう。 別にあたしが超能力を持ってるわけじゃない。 いつものことってだけよ。 「いいわ、また302ね」 そう応えて、ボールペンを胸ポケットに挿すとゆっくり立ち上がった。 302っていうのは、『武田のお婆さん』の病室のことよ。 うちの病院に運ばれてきて2ヶ月目になる。 元気になってきたのはいいのだけど、最近子供じみたいたずらが多いの。 真夜中のナースコールもそのひとつ。計ったように夜中3時に鳴らす。 サラリーマンの定時報告よりある意味律儀ね。 なんて言ってる場合じゃないわ。万一本当に何かあったら大変なのよね。 「ちょっと見てくるわね。さっき、見回りしたとこなんだけどね」 「お願いね。友美」 一応一番親しい同僚に苦笑しながら頷いて、ナースセンターを出た。
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