2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
夜の22時を過ぎた。私にとって夜とは特別な存在なのだ。都内に住む私は、マンションのベランダで少し肌寒い風を感じながら煌々と光っては消える障害航空灯、車のテールライト等を見て物思いに耽っていた。手にはスコッチウイスキーと国産タバコ。これらは私の「今」を感じさせてくれる代物なのだ。いわば友達である。大学でプログラミングとオフィスツールの勉強をしてきた私は、順調に中小企業に就職し、現在SEをやっている。仕事以外無趣味な僕は、少しだけ気が病んでいるのかもしれない。スーパーへ夕飯の買い物など行った時、手を繋いで嬉しそうに今晩の献立を考えている若い夫婦など見ると、僕の愛読書の「幸福論」が思い浮かばれる。幸せは孤独を埋める作業なのだ。皆一人になりたくない。皆誰かと一緒に居たい。社会参加欲ともいうべきこの欲求に私は打ち負かされているのだろう。タバコが友達なのだ。たとえどんなに体を壊そうとも。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!