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驚いて振り返ると、煙突の梯子を自力で登ってきたらしい黒スーツの男が息を切らしながらヘラッと笑っていた。
「びっくりしたっ……、てか。アンタ誰?」
見慣れない顔に警戒しながら言葉を返す。今朝まではあたしの担当はヨボヨボのじいさん仙人だったはずだ。
「あ~、人事異動です~。今日から俺がサクラさんの担当になったんです~。朝はちょっと寝坊して間に合わなかったんですけどね……。あの、よろしくお願いしますね~?」
こわばった笑顔で右手を差し出す新人仙人の顔を観察する。意外と若い。かなり若い。多分二十代前半。そして世間一般的に見てもこれは多分イケメン。
そのイケメンの右手はプルプルと震えていた。
「……アンタ高い所苦手か」
「そっ、そうなんです~。だから早く降りたくて……」
「金斗雲は?」
「……あ。下に……、置いてきてしまいました……」
「アンタ馬鹿だろ」
ちょっと頭のゆるそうな新人仙人を前に悟った。閻魔のヤツはあたしに問題児を押し付けやがったな、と。
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