一日目

4/6
前へ
/43ページ
次へ
驚いて振り返ると、煙突の梯子を自力で登ってきたらしい黒スーツの男が息を切らしながらヘラッと笑っていた。 「びっくりしたっ……、てか。アンタ誰?」 見慣れない顔に警戒しながら言葉を返す。今朝まではあたしの担当はヨボヨボのじいさん仙人だったはずだ。 「あ~、人事異動です~。今日から俺がサクラさんの担当になったんです~。朝はちょっと寝坊して間に合わなかったんですけどね……。あの、よろしくお願いしますね~?」 こわばった笑顔で右手を差し出す新人仙人の顔を観察する。意外と若い。かなり若い。多分二十代前半。そして世間一般的に見てもこれは多分イケメン。 そのイケメンの右手はプルプルと震えていた。 「……アンタ高い所苦手か」 「そっ、そうなんです~。だから早く降りたくて……」 「金斗雲は?」 「……あ。下に……、置いてきてしまいました……」 「アンタ馬鹿だろ」 ちょっと頭のゆるそうな新人仙人を前に悟った。閻魔のヤツはあたしに問題児を押し付けやがったな、と。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加