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へっぴり腰の新人を煙突から引っ張り下ろし、金斗雲に飛び乗る。今日はボトル三本作って疲れた。早く帰って寝たい。
そんなあたしの気持ちに気付きもしない新人は、こっちを見つめたまま間抜けな顔で笑っていた。
「本当に小さいんですねえ~。聞いてきた通りだ~」
「イヤミか?」
「いやいやいや、違いますよっ。フランス人形みたいな格好した小柄な女の子が背丈の倍はある大鎌振り回すんだって聞いてきて……。どこかな~?って思って飛んで来たらすぐ見つかったから、なるほどなるほど、と……」
「鎌って言うな。もろに死神みたいじゃん」
「えぇっ……、だってサクラさん、死神……ですよね?あれ?」
死神。
確かにあたしのやってることはそんな仕事だけど。
死神。
と、呼ばれるのはどうも気に入らない。
あたしは死んでないし、神でもない。
「あたしはアンタ達仙人の同僚だよ。ちょっと特殊な道具を持ってるだけ」
成仏しそこねたタマシイを天界へ運ぶという点では同じ。……だと思う。
あたしの言葉を聞いた新人は笑顔のまま目を輝かせた。
「なるほどっ。だから黒マントじゃなくて白ワンピなんですねっ?もしかして白衣の天使のイメージですかっ?いいですよね~これ可憐な感じがなんとも……。似合ってます~。噂通り可愛いですね~」
金斗雲から飛び降りて、ペラペラしゃべり続ける新人の口元をひっぱたく。
「ふがっ!!」
「いいから早く出発っ!」
新人の襟首を片手で掴み、金斗雲に投げ込む。
死神、って言葉もキライだけど。可愛いとか、可憐だとか、そんな誉め言葉も苦手だ。ありがとうと素直に受け止めるような心は、あたしは持ち合わせていない。
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