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「よし、できた!」
私がそう言ってフオンを見ると、彼はきらきらとした顔で私とブレスレットを交互に見た。
そしてそんなフオンに私の頬が緩む。
「それじゃあ一度つけさせてくださいね。もしきつかったりしたら教えてください。手直ししますから」
言い終えてから、完成したばかりのブレスレットをフオンの手首につける。
「どうですか? きつかったりしませんか?」
「ええ、大丈夫です」
穏やかな表情でフオンはそう言った。
初めて会ったときはなんて酷い人間なんだろうって思った。そして今日は先生の姿になってやって来て怒ってたのになあ。魔法石の声を聞いたらいつの間にか、というよりは瞬間的にそういう感情が消えていて。
自然とこの人に幸せになってほしいって思った。
でもこの人の生い立ちがどうであれ、今までやってきたことは許されるものじゃない。そこはしっかりと償わなければならないと思う。
私は許したけど、他の職人は許さないかもしれない。でもそれがこの人のやってきたこと。
「あの、リラ殿。申し訳ないのですが、今貴女にお支払いできるようなお金がありません。必ずお支払いしますので、どうかお待ちいただけないでしょうか」
「え? お金はいりませんよ。これは私からのプレゼントです。お金のことは気にしないでください」
「ですが……」
「本当にお金はいりません。でもその子を大切にしていただけると嬉しいです」
「それはもちろん! 大切にします!」
食い気味に伝えられるその言葉に、私も魔法石も笑顔になる。
「ですが、せっかく頂いたこのブレスレットとはしばらくお別れですね……」
「あ、それは大丈夫だと思いますよ。捕縛隊の人たちは私が造ったものだとわかるはずですし、何よりそのブレスレットに嵌め込んだ魔法石は危険なものではないので。だから外せとは言われないと思います」
いつだったかイズルとそういう話をしたときに「犯人が反省していて且つ危険性がない物に関しては外さなくていいんだよ」と言っていたから大丈夫なはず。あれ、そう言ってたよね。記憶があやふやだから心配になってきた。
「あ、でももし間違っていたらすみません!」
「いえ。大丈夫です。外さずに済んだらいいなとは思いますが」
フオンは言いながら、愛しそうに優しくブレスレットを撫でた。
――ポロポロ、ポポン。
魔法石がそれに反応して音を鳴らす。
穏やかで、寄り添うような優しい音。
「君もありがとう。私を選んでくれて」
――ポロン。
――ポロポポン。
「私がこれまで行ってきたことは決して許されることではありません。しっかり刑を受け、リラ殿と君に恥じない生き方をする。だからそのときはもう一度会っていただけますか?」
「もちろんです」
「ありがとうございます」
微笑んでまっすぐ私を見る瞳は、前に見たときより澄んでいて美しい碧色だった。
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