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掌に吸い込まれるように、幾筋もの雷が激しい音を立てながら集結してゆく。
それはまるで、荒ぶる龍の大群を片手に従えているかのような、神々しく荘厳な姿である。
何処からともなく轟音が鳴り響く。大地は激しく揺れ動き、次々と巨大なひび割れを起こしてゆく。
そして、遂にエネルギーが頂点に達した時、ルナの眼光が主を捉えた。
主の額に冷や汗が滲む。
「ま、まさか…この私を‥殺そうというのか?」
応答は無い。
圧倒的な力を前に、主の部下達は為す術もなく、ただ固唾を呑んでその状況を見守るしかなかった。
主は続けた。
「やめたまえ‥君には絶対に、私が必要なんだ…!」
まるで幼子をあやすような猫撫で声である。
すると、主の言葉が届いたのか、一瞬、ルナの口元に笑みのようなものが浮かんだ。
左手がゆっくりと下ろされる。
「ルナ‥いい子だ」
主が安堵の表情を浮かべた、その瞬間。
そこにいた誰もが、我が目を疑った。
制御を失った無数の雷が、ルナに直撃したのだ。
後を追うようにして、耳をつんざくような爆音が鳴り響く。
凄まじい爆風により、主とその部下達は思い切り吹き飛ばされ、辺りは粉塵に包まれた。
太陽だけが、全てを見ていた。
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