第1章

2/10
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
――現在。 とある町外れの、寂れた小さな酒場…。 薄暗く埃っぽい店内で、客もまばらな昼間から一人飲んだくれる中年の男が、得意気に話し始めた。 「‥なぁマスター、あんた“ラピスラズリ”って知ってるかぃ?…ヒック‥あぁ、もちろん女共が欲しがるキラキラした宝石飾りのコトじゃねぇぞ‥ヒック」 店主が馴れた手付きでグラスを拭きながら応える。 「ほぅ‥では一体何の事です?」 男が待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑う。 「…実はよ‥ここ十数年の間に、世界のあちこちで様々な災いをもたらす“呪われた子供”ってのが何人も生まれてるらしいんだ‥ヒック…」 店主はグラスを拭く手を休めることなく、黙って男の話に耳を傾けている。 「‥でよ、何でもその子供達の瞳(め)の色が、その宝石にソックリなんだと…。」 男は人差し指と中指で自らの両目を指しながら力説する。 「だからその瞳と、その瞳を持つ子供達は“ラピスラズリ”って呼ばれてんだとよ…!」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!