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――現在。
とある町外れの、寂れた小さな酒場…。
薄暗く埃っぽい店内で、客もまばらな昼間から一人飲んだくれる中年の男が、得意気に話し始めた。
「‥なぁマスター、あんた“ラピスラズリ”って知ってるかぃ?…ヒック‥あぁ、もちろん女共が欲しがるキラキラした宝石飾りのコトじゃねぇぞ‥ヒック」
店主が馴れた手付きでグラスを拭きながら応える。
「ほぅ‥では一体何の事です?」
男が待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑う。
「…実はよ‥ここ十数年の間に、世界のあちこちで様々な災いをもたらす“呪われた子供”ってのが何人も生まれてるらしいんだ‥ヒック…」
店主はグラスを拭く手を休めることなく、黙って男の話に耳を傾けている。
「‥でよ、何でもその子供達の瞳(め)の色が、その宝石にソックリなんだと…。」
男は人差し指と中指で自らの両目を指しながら力説する。
「だからその瞳と、その瞳を持つ子供達は“ラピスラズリ”って呼ばれてんだとよ…!」
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