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「ソル、お願いだ‥。」
決して大きくはないが、低く、凄みのある声であった。少年は覚悟を決めていた。
元より体が丈夫ではなかったのに加え、この屋敷の主人から受ける扱いによって日に日に弱っていくソル。
…これ以上彼を此処に置いてはおけない。
「兄さんは、僕が守る。」
ルナは、まるで自分に言い聞かせるように呟いた。まるで、心臓に直接響くような、真っ直ぐな言葉。
ソルはゆっくりと頷いた。思わず泣きそうになり、声が掠れる。
「ありがとう、ルナ‥約束だよ。」
「もしも失敗したらその時は…」そんな弱気な言葉が口をついて出そうになったのを、ソルは慌てて呑み込んだ。
ルナは微笑み、酷く痩せ細った自分の片割れを抱き締めた。
ルナにとってソルは、またソルにとってルナは、たった一人の、愛する家族。二人は互いに強く依存し合っていた。
ソルはロケットを首に掛け、微笑んだ。
この後、自分達を如何に残酷な運命が待ち受けているかなど、幼い少年達には予想出来る筈も無かった。
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