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そうしてその日の夕方
私は新撰組の屯所の門の前に立った。
「少しむさ苦しいがね、悪いところじゃないよ。」
そう言って私達はこれからの家になる屯所に入っていった。
「近藤さん!!ずいぶん遅かったじゃねぇか!心配したんだぜ!───って女!?」
「こら平助、失礼だろう。彼女の事は後で話すさ、取り敢えずトシの所へ行ってくるよ。」
「…あ、あぁ…」
珍しい物を見るような視線。
仕方がない事だが、居心地が悪い、
近藤さんは私を連れてある人の部屋へ向かった。
「トシ、入るぞ」
「─────近藤さん!?帰ってたのか…────!!」
近藤さんは元々の用事のことと、私の故郷である小さな村での出来事を話した、
「そこで総司の小姓をしてもらおうと思うんだ。」
「…そうか、あんたが決めたなら文句はねぇが、てめぇ、名前は?」
「いろはと申します、苗字は…子供の頃、兄と捨てました。」
そういうとトシ、と呼ばれるその人も、少し複雑な顔をした。
「いろはくん、こいつはこの新撰組の副長、土方歳三だ、…鬼の副長等と呼ばれているが、根は優しい奴さ。」
一言多い、と土方さんは言った、二人のやり取りからは仲の良さが伝わってくる。
「なにかと苦労してきた人だ、きっと上手くやってくれるさ、」
そう最後に言って、土方さんの部屋を出た。
「部屋なんだが…どうするべきか…男との相部屋は危険だしなぁ」
ぼそっと近藤さんが呟いた。
その言葉から、もう部屋がないということがわかる。
なんだか申し訳ない気持ちになった。
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