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いつだったか忘れたけど、山ちゃんは確かに言った「裕翔にはどんな事でも話せるよ」と。幼かった僕がどれだけその言葉が残酷で、胸を苦しめているのかなんて知るはずもないよね
「もっ、涼介まってよ!」
「知念が遅いんだろ?」
あれから数年たった今でもその言葉を忘れることなんてできなかった。最近、山ちゃんには恋人ができたのだ、もちろん1番に僕に報告してくれた
今日の撮影のテーマは走る。知念の先行く山ちゃんは意地悪してるけど、顔は優しい顔だ。知念にしか見せない顔なんだよね?
「山ちゃん、知念に意地悪しないで」
「う~っ裕翔くーん!」
「え、俺悪者?」
「他になにか」
「くっそ~!ほら裕翔、追いかけて来いよ!」
追いつかないことなんてわかってる。だって追いかけてもその背中すらも見えないんだから。掴みたくて伸ばした手は虚しく空気を掴むだけだった
「…ガキ。」
「まぁまぁ、怒んなって。ほら水」
「………。」
傍にいられないなら優しくしないで欲しい。でも優しくしてほしい。矛盾したこの想いのせいで優しくすんななんて言えないままで。知念が心配するのにね
*本当の気持ちは言えないまま
ずっと鍵をかけていた
END
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