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世紀末、世界は恐怖の魔王によって破壊された。広がるのは砂漠、遠くに光る海、点在する廃墟の町。 生き残った人類はほんのわずか。次第に生まれてくる子供たちに特殊な能力を持つものが現れた。中にはその力の強さに負けて死ぬものもいた。 ハクもそんな子供の一人だった。 腹の中にいるときから力が強く、何度も流産しそうになる母を助けてきたが、いざ産まれるときその力のせいで母親を亡くした。父親は最初からいなかった。 病院から子供の国という施設にいれられた。 子供の国とは、生きて大人になった者のいないところという皮肉をこめて呼ばれている。特殊能力を持つ子供ばかり集めて、色々な実験や訓練をする研究施設だ。 ハクのように産まれてすぐ連れてこられた子供もいれば、親に売られてきた子供もいるし、無理矢理引き離されてきた子供もいる。自分と同じような子供がいるというのはわかるが、施設内で他の子供と顔を合わせることはほとんどなかった。独房のような部屋と研究室を行き来する毎日。 みんな虚ろだった。ほとんど生きる楽しみなどなかった。 ハクは自分の一生を子供の国に利用されて終わりたくなかった。自分の寿命が20歳だと知ってから、さらにその想いは強くなっていった。 そんなある日、瀕死の妖怪が子供の国を襲撃した。その妖怪は子供も大人も目に映る動くあらゆるものを食っていった。 ハクはそのどさくさに紛れて子供の国を逃げ出した。 初めて見る外の世界は、広く高く果てのない希望そのものに思えた。
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