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そこに妖怪が追ってきた。
「お前が最後だ」
「他のやつらは、みんなお前の腹の中か?」
瀕死だった妖怪はすっかり治癒していた。さっきまで大狐だった容姿が彩り鮮やかな刺繍が美しい振り袖の女に変わっていた。
「お前は、他のものより力が強いな。お前を食らえば、さらに力を得られる」
ハクは再び砂漠とその向こうに見える海をながめ、廃墟の向こうにある白い建物で視線を止めた。
「あの白い建物まで連れていってくれたら、黙ってお前の餌になろう」
「そんな条件、私となんの関係がある。今ここで私の食事になれ」
「生まれて初めて見る世界なんだ。それにー」
それきりハクは黙った。
妖怪はハクをよく見つめた。
まだ少年だ。伸ばし放題の長い白髪交じりの髪、その隙間から覗く瞳は虚ろな緑。全身やせ細って、骨が浮き出ている。だが、みすぼらしくはない。
「わかった。お前をあの建物まで連れていけばいいのだな」
「ありがとう。俺の名はハク」
「私はクロ」
ハクとクロの不思議な旅が始まった。
昼間は灼熱の、夜は極寒の地獄を黙々と、二人は歩き続けた。道中、野盗に何度か遭遇し、妖怪にさらわれそうにもなった。二人は次第に打ち解けていった。
ハクはクロの昔話を興味深く聞いた。クロはハクの歌声に耳を傾けた。
そしてついに約束の白い建物のふもとまでたどり着いた。
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