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一人は、元から屋上に居た。突然の闖入者に目を丸くしている。その視線の先の少女は、自分が知る限りこの場所に、このような時間にこんな所へ訪れる訳がないと思っていたからだ。
もう一人は、自分に驚きの視線を投げかけている相手を静かに見据えていた。見知った顔だ。しかしそれほど気に留めたことはない人物だ、とその少女は心の中でひとりごちた。
しばらく沈黙が続いた。
闖入者が先に口を開いた。
「あんた、何のつもり?」
「こ、来ないで!」
元から居た少女が質問を跳ね返した。その身は屋上を囲う柵の外側にあった。つまる所、端からは身投げをしようとしている様に見える。
釘を刺され、動かない闖入者は先程から冷たい視線を、表情を変えずに投げかけ続けている。
また、沈黙が続いた。
今度は身投げ少女が口を開いた。
「貴女は―――」
これが二人の物語のはじまりだった。
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