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もう一度暖かい居間に所を移し、サジの話を聞くと、こうだ。
いまはたごで眠っているだろう連れのタオは見た目は少女であるけれど、生まれた時からの剣闘士で同じような少女と仲良く遊んだことがない。生まれは雪国であるから外で遊ぶのならまだなんとかなるであろうが、おそらく縫いぐるみを見るのは初めてである。
「ことにお話しする縫いぐるみとは…」
「いや、お話しはほかのはしないから、普通は」
「お話ししないものでもかまいません。ドロシーちゃんがあれほど楽しみにしているのに、もしうまく遊べなかったらタオさまがお気の毒で…ことによるとこの先、お友だちが苦手になってしまうかもしれません」
「ふむ、繊細な子にはそういうことがよくあるねえ」
「縫いぐるみでなくてもかまいません。なにか女の子遊びの練習とでもいおうか…そうしたことを、少しでもしておけば」
「うーん」
ワグナーの生活してきた国々には、自由市民ではない人はあまりいない。
貧富の差はあるけれど、当人の権利や意思はひとしく尊重されている。表向きは、ではあれ。
剣闘士タオは、試合の結果勝者であるサジに「与えられた」という。
少女が成人男性に「与えられる」とはいかなることなのか、成人男性であるワグナーにも想像はつく。
てっきり、ふたりは夫婦同然と思っていたが…
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