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ワグナーは深い笑みを心の中でつくった。
サジ君よ、男女の仲は優しさだけじゃどうにもならんこともあるよ…そう言ってやりたい気持ちでいっぱいだが、こうしたことは本人が自発的に切り開かねばならない。
帰り道。
サジの懐にはふかふかのうさぎの縫いぐるみがひとつ、彼の胸をあたためていた。
雪はあいかわらず激しかったが、サジの心はぽかぽかと浮き立っていた。
「おお戻ったか。朝食をいただいていたところだ」
銀の巻き毛を揺らし、水色の瞳の少女が抱き着いてきた。
はたごの入り口はすぐ食堂となっていて、あてがわれた部屋に行く前にサジはタオの出迎えをうけることになった。
「わたくしもいただきましょうか」
奴隷であった生活が長いせいなのか、タオに対して尊敬と尊重の気持ちが勝ってしまうのか、または彼女の故郷ミトの言葉に慣れていないせいなのか。
サジの口調は物腰同様丁寧である。タオのほうもはじめは少し抵抗したが、あきらめたようだ。
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