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「ここはどこ…だ?」
激しい頭痛と共に目を覚ますと全く見覚えのない森の中にいて、さっきまで楽屋にいたはずなのになんて頭を抱えながらむくりと起き上がる。
周りを見渡してみると人影はない、一応思いつく名前を呼んでみるものの自分の声が響いているだけだ。どっきりか何かか、なんて考えながらゆっくりと歩き始めるとがしゃんと足に何かがあたる。足元を見てみるとそこには洋画に出てきそうな少し長めの剣が落ちていた。
「なんだ物騒なもん落ちてんなぁ…、これなんていうんだっけ…?」
引き寄せられるようにそれを手にとってしまいそれを眺めると刀身が怪しく光る。妙な魅力をそれに感じてしまった俺は手に持ったまま歩き始めた。
銃刀法違反じゃね?なんて心の中で冗談を言いながら何故かどこかでこれを使ってみたい、これで何かを斬ってみたいなんて物騒なことを考えている自分もいて自然と口角があがるのがわかる。
そんなことを思いながら歩いていると俺の行く手を阻むように蔦が現れた。
いつもなら手で退けるそれを俺は無性に手に持った刀で切りたくなってばさりと勢いよく切り捨てる。
思ったよりも切れ味のよいそれに俺はふふっと自然と笑みが零れてしまい、その辺にある草木、花々を次々と斬りつけていく。
「すげぇ…斬れる、…気持ち、いい」
俺の足元には周辺にあったバラの花が落ちていてさながら道のよう。綺麗に散りゆくそれに俺の手は止まらない、もっと綺麗な赤い道をここに、俺の俺だけの道をここに作ってやろう。
最初はどっきりだとか、誰かを探そうと思っていたのにそんなこともうどうでもよくなっていた。もっと俺の足元を綺麗な赤で染めたい、綺麗な綺麗な真っ赤な色。
ぶすり、
今までとは違う切れ味に少し驚いたけれど、視線の先には大好きな君の姿。
「なんだ、こんなとこにいたんだね」
『いちばんめアリスはいさましく
けんをかたてにふしぎのくに
いろんなものをきりつけて
まっかなみちをしいていった
そんなアリスはもりのおく
つみびとのようにとじこめられて
もりにできたみちいがいに
かのじょのせいをしるすべはなし』
一番目 アリス おしまい。
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