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――2月14日、バレンタインデー。
女の子が男の子にチョコレートをあげて、きゃっきゃうふふ、なリア充バンザイなイベント。
爆発しろこのやろうがああぁぁぁぁ!!!
と、心の叫びは置いておいて。
「そんなイベントなんだ。通りで町中甘い匂いがすると思ったよ」
「カルは、そんなイベントに参加したことはないのですか?」
「ない。興味もない。いい思い出もない」
「あ、……あぁ、なるほど」
どはっきりと言ってのけるこの少年。
名前はカル――一応勇者。
ちょっとだけ落胆してるのは、彼の相棒。
モッフヨンに転生しちゃっただけの聖剣ザドキエル。
通称エル。
一部にはウサキエルと呼ばれてたりする。
「それにしても、今年のバレンタインは普段のソレと全然違うような気がします」
「……どこが?」
教会屋根に座って見ている二人。
甘い香りのするクマが何かを探すようにうろつき、道端ではカップル(と思われる人々)がいちゃつき、一部の男性は涙を流す。
――普通だろう?
「なんと言うんでしょう……」
「わからないなら、言わなくていい。煩いから黙って」
「ぅ……」
俯くエルから視線を逸らしたカルは、自分に向けられる気配にゾクリとした悪寒を感じた。
同時――猛スピードで風に乗り、飛んでくる物体。
鍛え抜かれた胴体視力で難なく避けると、それは遥か彼方へ飛んでいく。
――爆発音と共に誰かの悲鳴らしきものが聞こえたのは、気のせいだろう。
†
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