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暖かい気持ちのことを、よく考えるようになっていた。
大好き。
守りたい。
思いやり。
たくさんの想いが浮かんでは消え、とても掴み所のない気持ちに悩んでもいた。
例えば、宿題をしていて間違えたら、消しゴムでキレイに消すことができる。
それは見えていることだし、消しゴムは掴めるからだ。
『負の感情』を消すには、剥がして浄化するには、暖かい気持ちはあやふや過ぎて解らなくなってしまう。
消しゴムのように「これ」と断定できるほど、智美は人生を生きてはいない。
『そうじゃのぅ』
お館さまの声が響いて、我にかえる。
そうだった。
ここでは思い付いたことや考えたことが、消し忘れたラジオのようになるんだった。
小さな頬が赤くなった。
ふっと優しい笑みを、お館さまは浮かべていた。
『わらわは言わなんだかぇ?』
『はて?』ともり。
『さて?』とこり。
『「黒冠」は剥がして浄化するよりも、浄化して剥がすほうが難しくないぞ』
智美と二頭はそれぞれを見ながら、首を傾げてしまった。
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