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『剥がれぬか』とこり。
『己で乗り越えねばならぬ』ともり。
二頭の御遣い狐たちも、智美の様子が気になって仕方がない。
『陰の間口』でいつもの席に腰掛けながら、智美は何かを作っていた。
こりともりは『黒冠』を何とか剥がそうと、訪ねるたびに試してくれた。
それ自体を額に浮かび上がらせるところまでは、協力しながらできるようになった。
春休みが終わるまえに剥がしてしまいたい。
二頭の浮かない気持ちとは逆に、智美はヤル気満々だ。
『できた♪』
互いの足元を項垂れて見ていた二頭は、明るい思念に頸を立てる。
小さな手には、ビーズで拵えた小さな白い狐が、ちんまりとふたつ座っていた。アクセサリートップだ。
『なんと』ともり。
『我らによう似ておる』
こりはくすりと笑う。
それを用意してきた組紐に括りつけると、こりともりの頚に掛けた。
『暖かい想いの詰まった善きモノぞ』
『う…うむ』
もりが照れたように頷くと、こりがペロリと頬をなめる。
『智美からのプレゼント』
うれしそうなこりともりを見つめて、嬉しさを感じた。
何となく大丈夫なような気もしていた。
お館さまに教えてもらったのは『負の感情』は、暖かい気持ちが浄化していくという方法。それは、とても強い想いなのだとも。
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