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「どうもはじめまして。」
「わざわざ遠くから来ていただいて‥」
両親同士が、顔を合わせたとたんあいさつをはじめた。
お茶をのみ雑談した後、
予約をしておいた料亭へむかった。
私の父の顔なじみだというお店で、割烹料理のお店だった。
離れになっていたそこは、
海が一望できる素敵なところだった。
世間話に花を咲かせ、
アルコールもみんなすすんだ。
一段落して、
ビー君のお義父さんが、
すっと、かしこまって
口を開いた。
「あの、ご存じかと思いますがうちの息子とお宅のお嬢さんがお付き合いさせていただいて、私どもも明るいお嬢さんを見て気に入っております。」
「そうですか、それはそれは・・・ははは。」
悪い気はしないのか
父はにこやかに言った。
「それで、先日お互いの気持ちを確認したところ、二人は揃って将来を真剣に考えていると言っていたもので‥その‥」
一同がシンとした中、
お義父さんは話を続けた。
「先々の事を考えて、いずれ一緒になるのならば、ここらでけじめをつけて‥と思っているのですがいかがなものでしょうか?」
おおおおおおお!?
隣に並ぶ私の両親は
目が点になっている。
さらに続けて、
「二人の気持ちも固まっているようですし‥どうでしょうか?まぁ、早いとは思いますがもう二人とも子供ではないのでねと、思いまして。」
少し間をおいて私の父は、
「お互いがそうしたいというならば‥後押ししていかなければならないでしょうね‥」
あっさりと承諾した。
ホントに??
こんな簡単に決めていいのか?
気持ちは固まっているって‥?
そりゃめちゃくちゃ
結婚って憧れで‥
夢にまでみた、結婚だ。
なんの苦労もなしに、こんなに簡単に、あっさりと!!??
「じゃあ、いつ頃にしましょうかねぇ?」
ビー君の父は、
張り切って聞いた。
話の展開においつかないのか
私の父は、とんとんすすめられる相手の父からの話に「はぁ」「そうですね」と答えるのが精一杯だったようだ。
父はもともと、初対面の人とよく話すタイプではない。
だが時間がたつにつれ、
嫁に出すという実感が湧いてきたのか、
淋しさからかヤケ酒のように酒を口に運んでいた。
その光景を、
なにかドラマのワンシーンかのように、第三者の目でみている私がいたのは事実だった。
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