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しかし、そんな気持ちとは裏腹に、麻衣の細い首を巨大な力が押さえ付ける。
上を向かせようとする強い腕。必死に抵抗する麻衣。
徐々に喉元が圧迫されていくような感覚。
その息苦しさに耐え兼ねて麻衣は首を伸ばした。
──刹那、
「ぃゃあぁーーっ!」
麻衣の絶叫が廊下にこだました。
大江の細い首は不自然な方向に曲がり、ベット柵に頭を押し付けるような恰好をしていた。
柵の間からこちらを睨みつける、血走った眼と視線が絡む。その瞳には吸い込まれそうな深い恐怖の色が淀んでいる。
陥没した右頭部からは赤黒い血の塊が飛び出し、軽やかな水滴の音に混じって、熟した果実が潰れたような音を立てて、床に落ちた。
その音を聞いた瞬間、麻衣は自分の意識を手放した。
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